たま〜に映画 音楽情報


2024.4.14
オッペンハイマー

今年のアメリカアカデミー賞作品賞など7部門を独占した話題作。日本公開は世界から8か月も遅れたが、予想外?のヒットとなっているそうだ。
原爆被害の描写が少ないなどの指摘はあるが、アメリカも正義一色で原爆が作られたわけではないという舞台裏と、兵器開発という傲慢さを露わにした意味で、アメリカの歴史に批判的な、実験的な作品だと思った。
こうした自省に立って歴史を顧みる作品がアカデミー賞を取った意義は大きいと言える。

「原爆が戦争を早く終わらせた」という米国民意識に一石を投じたが、アメリカでは比較的批判も少なく冷静な受け止めで、国民の戦争に対する意識が変化してきている気がする。
トランプ支持者の主張する強いアメリカがどうしても目立つが、一方でテロや近年の戦争を目の当たりにした特に若者を中心に、ナショナリズムや力による国家主義に疑いの目を向けている人も増えてきてように思える。

監督が描きたかったのは、原爆そのものよりも人間や政治の滑稽さだろう。関係者の無知や無責任ぶりとともに、オッペンハイマーの名誉欲と苦悩という人間ドラマだ。
じゅぶんに戦争の馬鹿馬鹿しさが伝わってきた。大事なのは問題提議であり、世界で多様な話し合いが進むことを願いたい。