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2023.9.21
「英雄の証明」

何の情報もなく見始めたので「どこの国の作品?」と分からなかったが、どうやらフランスとイランの合作の様だ。舞台はイラン。
カンヌ国際映画祭グランプリ、アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した作品。

金銭問題で服役している主人公の男が、大きな正義感と小さな嘘で狂ってゆく人生の行方を追う物語。
囚人に休暇が与えられ一時的にも家に戻れるという設定に驚きだが、とにかく家に戻ってくると婚約者が偶然にも17枚の金貨を拾う。借金を返済すれば出所できる彼にとって、まさに神からの贈り物。
一旦は金貨を換金しようとするが、罪悪感に苛まれた男は落とし主に返すことを決意。町に張り紙をして落とし主を探し、自宅で簡単に返してしまうのが謎。ただそれはメディアに報じられ一躍“正直者の囚人”という英雄に祭り上げられていく。

ところが、SNS を介して広まったある噂をきっかけに状況は一変。周囲の狂騒に翻弄され、無垢な吃音症の幼い息子をも残酷に巻き込んだ大事件へと発展していく。

予想外の事態に直面した普通の人々の混乱を、サスペンス仕立で見せる演出が見事。イランという国が何となくサスペンス感を強く感じさせる。
ポイントはSNS。貧しい遠い国のように感じられるが、SNSによって生まれる歪んだ正義や不条理が新しく、現代の話として説得力を持つ。
私たちにも共感できる部分は多く、情けない主人公にも同情出来る。