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2025.11.8
「殺人者のパラドックス」

やはり韓国ドラマは面白いので連続で見ている。こちらはNetflixで2024年2月より独占配信がスタートした注目の韓国ドラマ。
退屈な毎日を送る大学生イ・タンが誤って人を殺してしまったことから始まるクライムサスペンス。
目標も持てず何も自分で決断する事なく、流されるままに生きてきた平凡な大学生。退屈な日常から、殺人という非日常を通して、とある特殊な才能に気付いた彼の人生はどうなってしまうのか。

このドラマは殺人もあるクライムサスペンスですが、どこかブラックユーモアに包まれた不思議な世界観のドラマです。私は「パラサイト~半地下の家族~」のポン・ジュノを思い出しました。
韓国の演出家の中には、こうした不思議な世界観のブラックユーモアを含んだ新しいヒューマンドラマ、しかも社会派ドキュメンタリーの要素も含んだ作風で秀でた方が多い気がします。映像の「カット割り」や音楽の使い方も独特ですごくセンスがある。

この作品も大学生が主人公ですが、優秀な刑事が捜査に加わりサスペンスの趣きになりますが、次々に関わっている人が現れてきて事件は複雑化してきて、「テレグラム」という秘匿性の高いアプリから指示をしている事も分かり、現代の情報機器を使用した複雑化した事件の様相を呈してきます。こういくだろう、という視聴者の想像の上を行く、畳みかける展開が韓国ドラマの真骨頂。毎話「え~」と思わせてくれます。
しかも、殺される人々はどうしようもない極悪人ばかり。だからといって人を殺して良いわけはない。でも誰もが、本当に理不尽な犯罪を前にした場合、否定しきれるでしょうか。
なおかつ「テレグラム」も出てきて、はたしてどこまで自分の意志で行動しているのか、はたまた指示されているのか、やらされているのか、その境界線まで分からなくなります。
フェイクニュースなども含むネットによる情報社会の中で、私たちは、いつでも悪人に利用される危うい立場にあると言えます。

本品は、社会問題を含んで、正義とは何か、悪とは何か、その境界線を問いかけてきます。観る側の倫理観を。